「新喜劇か?」

店舗の中で怒号が飛びます。

「何やこのスマホー買ったはええけどろくに使われへんやん!どないなってんのー!!」

「ほんまにええかげんにしてほしいわー!」

耳元での怒鳴り声。
関西弁で怒鳴られると余計迫力があります。

今から5年程前の2月頃の事です。
この頃のスマホはというといまだ容量の小さいスマホが多くフリーズを起こしたり、電源落ちしたりと不具合に近い症状が頻繁に出ていた時期でした。
何度修理しても同じ状況になってしまう事が多々あり、このお客様だけでなく多くのお客様に発生していたことでした。
しかもメーカーに出せば「再現なし」で返ってきてしまう始末。
結局、このお客様とは半年程、修理に出したり、店舗で色々やらせていただきましたが、治らず原因不明という結果でした。

初修理より3か月ぐらいたったある時、再びそのお客様が修理で来店されました。
いつにもましてその日は機嫌の悪そうな様子のお客様。
やはり例の如く、耳元でどなられました。

「この3か月どないしてくれるんや。毎回足運んどんのや!」

これはやばい状況だと周りの空気が凍てついていくのがわかりました。

「も、申し訳けありません!」

そう言った瞬間、お客様の顔色が変わりました。
voice4-1

「えっ、何、自分関西の人?はよゆうてーな!」

一瞬にしてその場の空気がガラリと変わったのです。
私の発した「申し訳ありません」のイントネーションが自分でも意識したつもりはないのですが崩れてしまい、関西弁に近いイントネーションに聞こえたようでした。

「わし大阪の難波やけど自分どこ?」

「私、違いますよ。知多半島の出身です。すみません知多弁が出ちゃいまして・・・」

「えっ何々、知多弁て関西弁に近いの?イントネーションおんなじやん、おもろいなー」

「どちらかというと三重弁に近いかもしれませんねー」

ズルっ お客様はこけそうになって言いました。

「ズルっといってもーたわ!」

もうスマホの修理の事など忘れてしまい、店の中で新喜劇がはじまっているようでした。
つい出てしまった知多弁が窮地を救ってくれました。
それ以後もお客様は何度か足を運んでくれたのですがスマホはというとありとあらゆる手をつくしましたが少し良くなった程度でした。

「この半年間ほんとによーやってくれたんで店長に免じて今回は機種変更するわ。iPhoneに変えて。」

初めのころに耳元で怒鳴ってきたお客様はもういません。

「今回分割にされますか」

「冗談やろー自分、キャッシュで買うがなー」

「では合計で108680円になります。」

お客様はまたズルっとこけそうになりながら翌月には奥様の機種変更もしていただき、今でもたまにご連絡をいただいたりしています。 5年前の私は言葉に助けられたというよりお客様に助けられたといっても過言ではないように思います。一人一人のお客様に精神誠意を伝えることの難しさを痛感させられたエピソードではありましたがお客様は私どもの姿を細かく見ていらっしゃるのだと思いました。一生懸命な姿に共感や信頼をおいてくださるのだと感じました。

「えぐいなー」

翌月には奥様の機種変更もしていただき、今でもたまにご連絡をいただいたりしています。
5年前の私は言葉に助けられたというよりお客様に助けられたといっても過言ではないように思います。
一人一人のお客様に精神誠意を伝えることの難しさを痛感させられたエピソードではありましたがお客様は私どもの姿を細かく見ていらっしゃるのだと思いました。
一生懸命な姿に共感や信頼をおいてくださるのだと感じました。